緋色のアイスコーヒー#2

ごゆっくり


猫そっくりの店主は

やさしい声の持ち主の前にアイスコーヒーを置くと

店の奥に消えた


何も尋ねず

何も言わず

ただ

同族だけにわかる何かをやりとりして


あなたは今もミケと暮らしているのでしょう


思わず店の奥を振り返ったが

店主は僕らを気遣うように

気配すら消したままだ


二本足で人のようであったとしても

四つ足で人に寄り添うほうであったとしても


“猫が空を落とす”


そんな慣用句が存在するこの星で

猫と暮らすのは

正直

心が痛くなる日もある


だが

僕はそれには答えず

こう口にした


アイスコーヒーは緋色ではなく

どこか遠くの星で飲まれるものと変わらない色だ

それをどうしてきみは“緋色”と呼んだの


ずるいね


楽しそうに笑うと

きみは

アイスコーヒーを美味しそうに飲み干した


でも

そんなところが大好きよ

あなたが猫じゃなくても


きみは

本当の猫のように顔を洗う仕草をすると


またね


音もなく

ふわふわのまあるい手で僕の頬に触れた