詩人屋さんの打ち明け話#2

電車に乗るのが好きで

岬に移り住む前は毎日のように乗っていた

とりわけ

駅舎にツバメが巣をかけるような

一番ホームしかないような

そんな駅でひとりになりたくて

(三角の耳も長い尻尾もジロジロ見られないしね)


手帳代わりのスケッチブックと

簡単なお弁当を携え

出かけていたっけ


あたしはそんなに星を渡ったわけじゃないけれど

旅猫の血が騒ぐことはたまにあって

こうしてひとところに落ち着いていると

心がざわざわ

耳がピクピク

つい文字の世界で空想の旅に逃げ込むのよ


空が降るようになってからは

すっかり旅とはご無沙汰


そうそう

毛糸屋さんのところに

雲を数えることのできる人が来ていてね

今度ラジオで雲予報をするんだって

話してくれた


「詩人屋さん、週末は急な“空降り”に気をつけてくださいね」


概況まで教えてくれて

こちらがすっかり感心していたら


「雲を数えられても毛糸の目を数えるのは苦手なんです」


照れたような笑顔になった


こんな風に

雲を数える人や数え方を知らない人や

旅猫や元旅猫や

三つ目の種族やら

大きな喧嘩も(戦争と言ったほうがわかりやすいかしら)

起こらずに慎ましやかに暮らせるのが

トーザ・カロットのいいところなのかも

知れないね